話題のストリートスナップカメラマン・なおがら氏が本拠地・浅草で初の個展を開催
先日のインタビュー記事で紹介したストリートスナップカメラマン・なおがら氏初の個展「なおがら展」が、浅草ビューホテル最上階28階のトップバンケット「ベルヴェデール」にて8月10日(土)から12日(月・祝)の3日間開催された。
今でこそ浅草を拠点に活動するストリートスナップカメラマンとして認知され、SNS総フォロワー数20万人以上を誇るなおがら氏だが、ストリートスナップを志したばかりの頃、それもわずか一年前には思うように街行く人に声をかけられず、スランプに陥っていたという。
今回の個展では、そんな暗黒期ともいえる時代の感情を示した作品もあえて出展。自分自身のストリートスナップカメラマンとしての歴史を包み隠すことなく、あからさまに表現することで足を運んだ来場者に大きな感動を与えてくれた。
普段は結婚式の披露宴会場などにも使われるほど広い「ベルヴェデール」で開催された「なおがら展」のテーマは「浅草で生まれた8つのしてん」。
会場内は私点、至点、支点、視点、死点、指点、四点、始点という、同じ「してん」と読めるのに意味が異なる8つの単語に合わせてブース分けされ、それぞれの意味に関連するポートレートが展示された。
私点
会場入り口からすぐの場所に設けられたのは、なおがら氏がこれまで撮影してきたポートレートが壁のように貼り出された「私点」。まずはその数に圧倒される。
その壁の裏側には、会場で当日撮影した写真を貼ることができるようになっていた。
取材は初日のスタート直後だったため、まだ8枚ほどしかなかったが、最終日には壁一面が写真で埋め尽くされた。
始点
なおがら氏をストリートスナップカメラマンにしてくれた街・浅草で出会った人々のポートレートを展示した「始点」。
人生を変えてもらったのはなおがら氏だけではなく、手前右の写真に写った重度の網膜症を患う女性・和田彩さんはこの撮影がきっかけで人生が激変。
今では音楽ユニット・DEFIのTikTokアカウントは3万フォロワーを超えるようになった。
街の人を撮影した際は、お礼に写真をパネルにしてプレゼントしているなおがら氏。
写真の裏には直筆のメッセージも添えられている。こうすることでプラスアルファの幸せが届けられるのだという。
「なおがら展」のオープニングセレモニーでは、和田彩さんと臨床心理士・音楽家の石川泰さんの音楽ユニット・DEFIのミニライブも行われた。
透き通るような高音が印象的な彩さんの歌と、数々の楽器を変幻自在に操る石川さんのテクニックが居合わせた観客を魅了した。
四点
なおがら氏が初めて手に入れたカメラをはじめ、笑顔、コミュニケーション、行動が彼を支える4つのアイテム。このコーナーでは今回の個展開催に尽力した浅草ビューホテル、革のソムリエ(グッズ制作)、プロジェクトメンバーも紹介された。
浅草ビューホテルの紹介コーナーでは、「なおがら展」開催にあたって撮り下ろされた200名を超えるホテルスタッフの写真も展示された。
ホテルスタッフの撮影風景。表に出て働くスタッフだけでなく、調理人や経理担当、ボイラー室の管理人など裏方として日々汗を流してがんばるスタッフまで、一人ひとりをなおがら氏が丁寧に撮影した。
至点
いくつもの分岐点から生まれた人と人との出会いを表現した「至点」。
右の大きなパネルは、写真をパネルにしてプレゼントするスタイルを始めるターニングポイントになった一枚。当初は写真データを贈って終わらせていたが、スマホを持っていない人にプレゼントできないことに気づき、到達したのが今のスタイル。
プロサッカー選手になる夢を断念し、高校卒業後は東京消防庁に入庁したなおがら氏。
消防士として過ごした5年間は、火災現場へ向かう消防車を運転していたという。こちらのコーナーでは、そんななおがら氏の過去のスナップも展示されていた。
支点
浅草といえば「お祭り」。
今のなおがら氏を支えてくれる街・浅草の象徴であるお祭りの写真を展示。
視点
ほかのコーナーとはちょっと異なった写真が展示された「視点」コーナー。
こちらに展示されているのは、浅草へとたどり着く前に悶々としていた感情を写真で表現したものだという。
指点
こちらの大きなパネルは渋谷で撮影されたもの。
「指点」コーナーでは、狙いは捉え方を変えるだけで希望に変わるという感情を表現した。
死点
そして最後は「大切な人へのありがとう」をテーマにしたパネルを飾った「死点」コーナー。
大きく手書きされた「喜ばれる人に。」は、なおがら氏の現在のテーマであり、その想いを胸に浅草の魅力的な人々を伝えるストリートスナップを発信している。このパネルも、個展終了時には来場者の寄せ書きで埋め尽くされた。
DEFIのミニライブ終了後、来場者のみなさんの集合写真を撮るなおがら氏。
記者も仕事柄、集合写真を撮影する機会は多いが、これだけの人数をすべて笑顔にして撮るのは至難の業。どうしても何人かは緊張で顔がひきつってしまうはずなのだが、みんな屈託のない笑顔を見せているのは驚きだ。
撮影風景を眺めていて、その秘密はどうやら撮影者の資質によるものだということに気づかされた。撮る側が明るく、元気で、そして何より笑顔でなければ写される側が自然な笑顔を見せてくれるわけがないのだ。やはり「喜ばれる人に。」という想いを胸に抱いたなおがら氏は、知らず知らずのうちにそれを体現できているのだろう。
取材日は快晴のお盆休み初日ということもあって、浅草は多くの人たちでごった返していた。日本のみならず、世界中から多くの人が訪れる街・浅草。ここでストリートスナップを撮るなおがら氏は、これから先も多くの写真を撮り、多くの人を喜ばせるに違いない。
初の個展「なおがら展」を終えた想いや気持ちと今後の活動について。
今の僕にできる全てを出し切ることができました。
3日間で計1,500名超える来場者の方を目の当たりにして、「こんなに応援してくれている人がいるんだ」と、リアルで初めて感じました。
ご来場いただいた皆さま、いつも応援してくださるフォロワーの皆さま、浅草の皆さま、なおがら展プロジェクトメンバーの皆さまに心から感謝しています。
今後の活動として、まずはコツコツと今までやってきたストリートスナップ、ライブ配信を継続的にやること。 その上で、来年のなおがら展や出版に向けて挑戦していきたいと思います。